シール印刷ラボ

シール印刷の価格(コスト)を安くするポイント【印刷方式編】

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課題

シール印刷の価格を安くするポイント。前回の基本仕様編に続き今回は印刷方式編です。シール印刷の印刷方式は大きく分類すると凸版印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、オンデマンド印刷の4つの方式があります。価格決定の要素にこの印刷方式も関係しており、それぞれの印刷方式の特性と価格感をおさえておけばシール印刷の価格を抑えたい時に役立つ可能性があります。今回は具体的な事例も交えて印刷方式を変更した場合の価格メリットをご紹介します。

※記事内容は当工房の担当者が感じた主観的な意見です。他印刷会社とは意見に相違がある場合もあります。予めご承知ください。

2017年09月01日

シール印刷の印刷方式とコスト感

冒頭で述べた通りシール印刷の印刷方式は大きく分類すると凸版印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、オンデマンド印刷の4つの方式があります。一般的な見解では量産するシールであれば凸版印刷・オフセット印刷・シルクスクリーン印刷の順に高くなる傾向があります。

◎凸版印刷の特性
シール印刷では最もよく採用される印刷方式。シール印刷の作業工程(印刷+ラミ貼+抜き加工+裁断)をワンパスで行うことができるので作業効率が良く価格が抑えられます。 サイズ的には小さなサイズからハガキサイズくらいまで対応することが多く、データの色数は1色〜3色までを得意にしています。デザイン内容次第ではフルカラーも対応。少ロットから大ロットまで幅広い数量で活躍しています。

◎オフセット印刷の特性
データを綺麗に再現できることが特長の印刷方式です。同じオフセットでも枚葉と輪転の2つの方式があり、枚用はA4などにカットされた1枚ものの素材を使い、輪転はロールになった素材を使います。どちらの方式も印刷のみとなり、ラミ貼・カット・裁断は別工程になります。なので凸版印刷より高くなる傾向があります。大きな印刷機を使う為、対応できるサイズも大きく、当工房ではハガキサイズくらいからA4サイズくらいまでを対応することが多いです。形状が角型のシールであれば裁断機で四方断裁するだけなので刃型などは不要。案件内容次第では価格メリットが高くなります。

◎シルクスクリーン印刷の特性
インキの濃度が高く耐候性に優れた屋外向けの印刷方式です。屋外にて半永久接着を目的にしたシール・ステッカーの案件で活躍します。また応用度も高く、タトゥーシールなどの転写加工シールはシルクスクリーン印刷を利用しています。この印刷方式もオフセット印刷と同じく枚葉式と輪転式があり、作業工程も似た工程で進めます。インキが厚盛になるので繊細なデータの再現には不向きであり、1色〜3色のデータを多くこなしています。量産タイプの印刷方式ながら凸版印刷・オフセット印刷とくらべて数量増加にともなう単価の下がり具合は低い傾向があり、当工房では100枚〜1000枚の案件を多くこなしています。

◎オンデマンド印刷の特性
この印刷方式の最大の特長は版を使わないことです。PC上のデータを素材に直接印刷します。イメージとしてはオフィス向やご家庭用のプリンターと似ています。版を使わないことで版代が不要となり、少量・多品種・短納期といった案件に活躍しています。印刷機メーカーごとに給紙方法やインキの仕様も異なるので細かな特性は解説しづらいのですが、CMYKのインキで印刷するので黒1色でも4色フルカラーでも価格は基本的に同じです。中にはCMYK+白+金+銀などのインキに対応している機種もあります。但し、DICやPantoneの番号指定で特色印刷するのは難しい場合があります。インキの耐候性は高くシルクスクリーン印刷にも引けをとらないものもあります。少量であれば価格メリットは高いですが、数量増加にともなう単価の下がり具合は低いです。

※残念ながら当工房ではこの印刷方式は採用していません。

それでは具体的な事例を交えて価格を下げる方法を紹介していきましょう。

凸版印刷からオフセット印刷に変更してコストを下げる

100mm×100mm程度の大きめのシールを10000枚印刷する場合、凸版印刷で対応すると版代や型代も高くなります。また印刷データも多く面付けできないので印刷回数も増えてしまいます。このような場合、印刷方式をオフセット印刷に変更することでコストが下がる場合があります。

凸版印刷対応
アート紙(普通糊) 100mm×100mm角型 1色印刷 2枚シートカット
10000枚 @5.60 ¥56,000-(税別)

オフセット印刷対応
アート紙(普通糊) 100mm×100mm角型 1色印刷 断裁+裏スリット1本
10000枚 @4.50 ¥45,000-(税別)

※金額はダミーです。当工房の実際に提出している金額とは異なります。

大きなサイズを量産する場合、単色データであってもオフセット印刷で対応する方が安くなる傾向があります。オフセット印刷機はとても大きな機械です。使用する版も大きく100mm×100mmのデータを複数面付して印刷回数を減らすことができ、印刷費用の総額を抑えることができます。但し、この場合の仕上方法は断裁の1枚カットになります。台紙と同じサイズで裁断するので裏面に背割れ(スリット)加工を1本入れることが一般的です。仕上方法などにこだわりが無ければオフセット印刷への切替は価格的に有効な手段です。今、お使いのシールもデータ内容が凸版印刷で対応できるものであっても、あえてオフセット印刷での対応を検討するとコストが下がるかもしれません。

※この事例は形状が角型の四角形であることが前提です。角丸や円形になると抜き加工が入るので高くなります。

オフセット印刷から凸版印刷に変更してコストを下げる

今度は逆のパターンです。10000枚程度の量産ではなく1000枚くらいまでの中ロットを検討する場合の事例です。現在、オフセット印刷で対応しているものを凸版印刷に切替た場合、下記のようなコスト感になります。

オフセット印刷対応
アート紙(普通糊) 100mm×100mm角型 1色印刷 断裁+裏スリット1本
1000枚 @30.00 ¥30,000-(税別)

凸版印刷対応
アート紙(普通糊) 100mm×100mm角型 1色印刷 2枚シートカット
1000枚 @28.00 ¥28,000-(税別)

凸版印刷で対応できるデータ内容であることが前提となりますが、サイズが大きくても数量が少なければ凸版印刷で対応した方がコスト的には良いでしょう。

シルクスクリーン印刷からオフセット印刷に変更してコストを下げる

最後はシルクスクリーン印刷からオフセット印刷への切替でコストを下げるパターンです。一般的にはオフセット印刷は屋外用途に不向き言われていますが、実際には良く目につく場所にオフセット印刷で対応したシールを目にすることができます。電車やタクシーの交通広告シールはその一例です。通常のオフセット印刷で対応したシールを屋外で貼りっぱなしにしておくとインキに耐候性がないので色褪せが早く起こります。これを防ぐ方法として耐候インキとUVカットラミネート(サンカットラミ)をお組み合わせることで耐候性を上げることができます。この組み合わせであれば1〜3年程度(※保証する期間ではありません)の期間は耐候性を発揮すると言われています。よってシルクスクリーン印刷で対応していたシールをオフセット印刷の耐候仕様に切り替えることでコストが下がることもあります。

シルクスクリーン印刷対応
塩ビ(強粘)+光沢ラミ 200×100mm角型 1色印刷 断裁+裏スリット1本
100枚 @800.00 ¥80,000-(税別)

オフセット印刷対応
塩ビ(強粘)+光沢ラミ 200×100mm角型 1色印刷 断裁+裏スリット1本
100枚 @600.00 ¥60,000-(税別)

屋外用途はシルクスクリーン印刷でなければいけないということはありません。ある程度の耐候性があれば良いといった場合は、オフセット印刷の耐候仕様はお勧めできます。

※印刷カラーが黒の場合は、黒自体が耐候色の為、特別な仕様は不要です。 ※この事例は形状が角型の四角形であることが前提です。角丸や円形になると抜き加工が入るので高くなります。

まとめ

シール印刷の印刷方式とその特性をよく理解し、コスト感を掴んでおくことでシール作りの価格を抑えることもできます。数量やサイズ、データ内容やご利用環境にマッチしているのであれば印刷方式を変更してみることも検討の余地はありそうです。当工房での御見積はシール印刷の案件全容を把握してから最適と思われる印刷方式を選定しています。今、お使いのシールの仕様や印刷方式が正しいか判別できない場合は、是非、一度、当工房へお問い合わせください。

この記事で解説したシールの用途・素材・加工方法

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